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『陸王』~こはぜ屋宮沢社長へのアドバイス、そんなプレゼンじゃあきません~

  • 2017.10.26

TBSドラマ 『陸王』初回2時間スペシャルはご覧になりましたか?

毎回ツッコミどころ満載!の池井戸作品が始まりました。斜めから観るとさらに面白いんです。
足袋屋が困難の末、畑違いのランニングシューズ作りで成功するというストーリーなんじゃないかなと思われます。今後も期待してます。 

 

初回の放送は、こんなお話でした。 足袋だけ作っていてもこの先経営が先細りするだけいう危機感を抱き、こはぜ屋の宮沢社長(役所広司)は足袋づくりの技術を生かしたランニングシューズを開発します。しかし、実績が無いのでランニングシューズが売れる見込みはなく、頭を抱える宮沢社長。
そこに舞い込んだ、とある学校からのコンペ参加依頼。新商品のランニングシューズを採用してもらうべく、宮沢社長は学校に赴き、競合プレゼンに臨みます。

 

ところがこのプレゼン、初歩的な間違いを犯してしまっています。ストーリー的には「社長!素晴らしいプレゼンでした、あれなら絶対勝てます!」(by丁稚)みたいなことになっているのですが、観ている側としては、そんなプレゼンで勝てるわけないじゃないか、とツッコミどころ満載なんです(笑)。

 以下は実際のビジネスプレゼンをご指導申し上げている視点からのツッコミです。 
 
++++++++++ドラマのシーンより++++++++++

まず、

「みなさん、本日はお時間を頂きまして有難うございます」

(これは、短いからまぁいいけど、このへり下る節、長いとだんだん聞き手のテンションが下がりますよね!)

「私共、こはぜ屋は埼玉県行田市で100年足袋づくりをしてまいりまして、この度そこで培ったノウハウを生かして<ガサゴソ>あっ、このような<ガサゴソガサゴソ>ランニングシューズを開発しました。」

(挨拶と大事なこと伝えてる部分はいいんだけど、社長!メインとなる靴はすぐ出せるようにしてください!)


「初めは先細る足袋産業をどうにかしなければという想いから始めたのですが、走りのメカニズムを学ぶうちに足袋の構造が、実は安全で怪我のないランニングを実現することに大いに役立つことを知りました。その時の感動は!今でもはっきりと覚えています!世の中から忘れ去られつつある足袋にもまだ存在意義が残ってたんだ、私たちがやって来たことは無駄ではなかったんだと、いやー、ほんとうに嬉しかったです!」

(開発の経緯とか苦労とか感動とか、商品を買うかどうかを考えている人に最初から伝えるものではありません!苦労して作ったらしいから、あるいは足袋が廃れると気の毒だからこの靴採用しよう、ってなことにはならないので。社長が感動したかどうかはどうでもいいから、買い手を感動させなくちゃ!こりゃ関係なさそうな話だなと思って、私ならそろそろ寝ちゃうかもっ!プレゼンの最後で少し出すくらいなら共感を得られるけれど、順序と分量を考えましょう。)


****息子が面接に落ちる毎度のシーンが挿入され****


「自分の子供にあとをつがせてやることもできず、時代の流れに負けて消えていく技術や伝統はたくさんあります。しかし、こうして形を変えることで新しく生まれ変わることができる、そういう文化を子供達にも身近に感じてもらって次の時代に継承していってもらいたいな、と。そういう思いを込めて私たちはこのシューズを作りました。」

(子供に跡継がせたいっていう思いをシューズの買い手に語っても仕方ないから、このくだりは不要!それよりシューズの機能について語りましょう!)


「このシューズの構造についてはもちろん自信を持っております。」

(もともとランニングシューズの素人なのに自信ある、なんて言われても説得力ないし。しかも、自信を持っているなどという抽象的な言葉じゃなくて、もっと具体的、客観的にシューズの利点を語って!)


「それ以上にあえて言わせていただくと、これは日本人が履くべきシューズです。ぜひこのシューズをこの国の未来を担う多くの子供達に履いていただきたいと、今日はお願いにやって参りました。ありがとうございます。」

(息子が面接落ちてるシーンの間に、きちんとミッドフット走行が怪我を防ぐとか、日本人にはもともとミッドフット走行が適しているとか、そういうくだりがあったということでしょうか?じゃないと、日本人は足袋を履くべきという安易な結論にしか聞こえません!!)

 

そして、付き添いの丁稚、感激して大拍手、それにつられてやっと会場拍手…。

  ++++++++++ドラマのシーン終了++++++++++


 宮沢社長の間の取り方、滑舌の良さ、声の響き、笑顔、どれをとっても話し方は素晴らしく上手いのに、内容が残念で、実に惜しかった。ドラマのストーリー上は社長がうまいプレゼンをした、という流れにされていましたが、
見ているこちらはなんだかモヤモヤ!

そもそも商品の売り込みに来ているのであれば、

プレゼン構成の     「イントロ(つかみ)ーボディ(本論)ーエンディング(結論)」

のうち、この「イントロ=つかみ」で当該商品に人々の興味を惹きつけることが何より大切なはず。

にも拘わらず、とつとつと語り手の心情を伝える、プレゼン手法でいうと「ストーリーテリング」といわれる手法を使ってしまいましたね。うーむ、これだと聴衆に商品の魅力を伝えるのは、なかなか難しいかもしれません。

社長にプレゼンについてアドバイスをするとしたら、まずイントロで、

「先日の豊橋マラソンを間近で見ていて、ふと、あるシューズの開発をひらめきました!」
と言ってみて、なんで?と思わせてから、「足袋シューズの開発です!」と出してみるとか。


「優勝したケニアの選手とそのほかの日本人選手、走り方の一番大きな違いは何だと思いますか?」
という質問から入ってみるとか。

そこから
・ミッドフット走行の利点を並べ、
・ミッドフット走行するためには足袋シューズが適しているという話とその根拠を展開、
・結論として足袋シューズを採用すべきだ!
と「強い提案」(=メインメッセージ)を出していただきたかったです。

更に、今までの厚底シューズのほうがいいのではないか、という反論とそれに対する反駁までを入れらればなお良かった!
今回のプレゼンの一番の敗因は「買った人にどんなメリットがあるのか」、という商品の魅力を伝えようという視点に欠けていた点でしょう。

せっかく商品がいいのにコンペで負けて残念!

こはぜ屋の皆さん、大事なプレゼンの前にはアルバ・エデュにご相談くださいね(笑)!!!

(Y)

『千住家の教育白書』を読んで

  • 2017.10.13

小学1年生の娘は、5歳からヴァイオリンを習っています。発表会は好きだけれど毎日の練習は好きではない様子。。。

音楽を楽しんでくれればいいな、と思いつつ、先生が毎日練習とおっしゃるのでやらせなければと、ケンカと試行錯誤の日々。

他のお宅は・・・と思っていたところ、この本を目にし、世界の千住真理子さんはどうだったんだろうと、手に取りました。

 

強烈でした。

道を究めるということは、とてつもないエネルギーが必要なんだ。

真理子さんがお母様と二人三脚で、前へ前へ進んでいく。でも、話はそれだけではない。

この家族には、明さん、博さんという二人のお兄さんと、学者のお父様がいる。このみんなのチームワークがすごい。

曾祖母を看取り、億円単位の名器を手に入れ、家族のピンチの時には世界の各地から集まってくる。共に戦い抜いた仲間、という印象を受けました。

「近い道など探すな。遠い道を苦労して行けよ」というお父様の言葉。子どもを信じているからこそ出てくる言葉。

仲が良いが、それはふんわりした関係ではなく、ぎゅっと濃密なチーム。こういう面を我が家も持ちたいと思いました。

 

私の育児の参考書に、この一冊も加えました。

 (Mihoko)

太陽は、なにいろ?

  • 2017.09.30

 

太陽は、なにいろ?

 

ほとんどの方は、「あか」とこたえるでしょう。

幼い頃から、ぬり絵に描かれた太陽や、お空の絵に描こうと思った太陽に、

さぁ、色をつけよう!と思った時、誰もがきっと「あか」を選んだはず。

そう、決して間違いではないのです。

だって、おひさまのいろは「あか」だから。そう教わってきたから。

でも、空を見上げてみてください。おひさま=太陽のいろは…本当にあか…でしょうか?

 

黄と白が混ざったような、色?

青みがかった白にもみえる?

 

そう、見えかたはいろいろ。

あか、と決まっているわけではなくて。

 

これは、あくまで一つの例。

 

「これは、〇〇だ。」「△△に決まっている。」

思い込みや固定観念に縛られていると、

見逃してしまうかも…、子どもたちの柔軟な発想力を。

豊かな表現力を。

 

大人になるにつれ、多くの既成概念に巻かれても、

自分を見失わずに、世の中と向き合えるように。

 

そんな思いを常に抱きながら、授業やワークショップで子どもたちと接しています。

 

 

ちなみに、欧米の子どもたちの描く太陽は黄色が多いよう。

きっと、“おひさまのいろは「きいろ」よ”

と、教わってきたのでしょうね。。。

 

 (Maki)

 

演劇に学ぶプレゼンテーション vol2

  • 2017.07.28

先日、劇団Alive a liveによる演劇ごはん『食レポの王様』、というレストラン内で演じられる異色の演劇を拝見しました。観客がお芝居の途中で「投票」という形で参加して劇のストーリー展開を決定したりするんです。そのためにいくつかのシナリオがあって、俳優さんたちは半年かけてそれぞれのシナリオごとにお稽古していらっしゃるとのことで。

いやはや頭が下がります。

そして、これが本当に、面白かった。

 

我々も食レポ王たちの講釈のあとに同じメニューをいただくんですが、解説を聞いているだけで頭の中は妄想だらけ。表現が情感あふれるものなだけに、もうお皿が来る前から食べたくて食べたくて待ちきれない!という高揚感に包まれ、ようやくお料理がサーブされ口にすると、「うーん、なるほど」と頭の中に蓄積されたイメージと実際の味が出会うみたいな不思議な体験でした。

 

私たちがプレゼンの授業や研修をする中でも、「聞き  手に伝わる表現を」、「相手に届く声の出し方を」、とコンテンツの作り方から発声練習まで行うのですが、まさにそれらの究極みたいな世界だなと感じました。

 

演目の後で女優さんとお話しをする機会があり、発声は日々鍛えているというお話、そして、声の出し方の技術的なところも大事だけれど、加えて、聴衆に「声を飛ばす」という心意気、マインドが肝心なんだ、とおっしゃってて、御意!と思ったのでした。

 

演劇とプレゼンについては、松岡が書いたばかり(こちらご参照)ですが、また欧米でのdramaの授業については改めて書いてみたいと思います。
Alive a liveさんの紹介動画はいろいろありますがこちら  そのうち予約取れなくなっちゃいそうだから、早めにまた行きたいです。

engeki gohan2engeki gohan

 20170717_演劇ごはん

演劇に学ぶプレゼンテーション

  • 2017.07.21

初めてブログを担当させていただきます、アルバ・エデュ理事の松岡泰之と申します。

 

数年前まで、私は舞台人でした。26歳で脱サラし、仲間と劇団を立ち上げて、全国を飛び回る日々。舞台の敷居を下げようと、1公演あたりの上演時間をテレビドラマと同じ最大45分に設定したおかげで、多い日には1日7~8公演、ほとんど休みもなく年間で数百公演をこなしてきました。劇団卒業後は企業の人材開発や経営戦略のコンサルタントとして活動することになるのですが、劇団時代の経験から、後のキャリアに活きる様々なことを学ぶことができました。

 

その最たるものが、プレゼンテーション。まず大前提として、演者は自分の「殻」を破り、ときに非常識なまでにキャラクターを「演じ切る」ことが、当然のごとく求められます。恥じらいも迷いも緊張も、舞台に持ち込むことは許されません。慣れれば何てことはないのですが、はじめはそれこそ、「鋼の心」を求められます。さらに、舞台のミッションは、伝えたいメッセージを何としてもお客さんに持って帰っていただくこと。作り手の立場に立てば、そのためにはどうメッセージを研ぎ澄ませばよいか、ストーリーをどんな順番で組み立てるべきか、どんな言葉を選べばよいか、どう芝居を見せるか、どんな演出を加えるべきか。徹底的にお客さんの視点に立って考え抜き、日々稽古を繰り返して、一期一会の本番に臨みます。このように、意識やスキルの面で、プレゼンテーションに活かせるポイントが凝縮されているのです。

 

最近、アルバ・エデュが提供するプログラムで「演劇から学ぶプレゼンテーション」を実施させていただくことが増えてきました。演劇からプレゼンテーションに活かせる要素を抜き出してプログラム化したものです。参加者の皆さんには、役者になったつもりでいろんなワークに取り組んでいただきます。皆さん初めは戸惑いつつも、ワークを重ねるにつれどんどん開放的になり、プレゼンテーションのコツを文字通り「体得」いただいています。

 

子どもから大人まで楽しみながら学べるプログラムですので、ご興味ありましたらぜひお問い合わせください。また、ぜひ近々お芝居を見る機会があれば、どんなプレゼンテーションのテクニックが埋め込まれているか、探してみるのも楽しいかも!?

(Yasuyuki)

育児休業中の女性社員向けの研修 ~たくさんの赤ちゃんに会えて幸せでした

  • 2017.06.21

先日、オリックス株式会社のグループ企業研修の一環で、育児休業中の女性社員の皆様40名ほどにお話しする機会をいただきました。

こちらの会社では、たくさんのシッターさんを雇って別室で赤ちゃんを預かり、育児休業中の母親がその間研修を受けられるという仕組みを毎年おこなってます。この日、初めて長い時間離れる、という母子もいて、預け始める時間に見に行ったらそこはまさに阿鼻叫喚! 中には、研修の間、数時間くらい泣き続ける「猛者」もいたようですが、保育園に預ける前にこのような機会を作り、母子ともにソフトランディングを図るというのは良い考えだと思います。

 

IMG_0426

 

 さて、研修では、この育児休業中の過ごし方として、母は何を身につけ何を捨てるか、子どもをどう育てておくか、いう観点からお話をしました。以下が当日の内容です。

 

  • 育児休業中に身につけるべきものは何か?
    • カラダ・ココロ・アタマがキーワード
    • 仕事の感覚は失わないようにするにはどうしたらよいか?
    • すきま時間の活用とネットワーキングについて
  • 脱「良妻賢母」宣言!
    • 根本に育てられ方、社会通念がある、ということを意識
    • マインドセットをどうするか
  • 捨てるものとは何か?
    • 24時間フルに使えないことを所与と考える
    • パートナーや実家に頼れない場合の施策
    • 「少家事」体制とは
  • 子どもの育て方
    • 育休中にいかに子どもの「社会化」を進めるか
    • 保育園は預けたら「神」だと思う
    • 疲れたら死んだふり

それからワークを行い、チームで発表をしていただきました。

子育てに失敗はつきもの、でも取り返しはつく、ということ。そして育児という、素晴らしい体験をもとに、今後のキャリアを彩り多いものにしていただきたい、と最後に皆様にお話ししました。

仕事と育児の両立は自分にとっての永遠のテーマでもあり、同じようにがんばろうとしている後輩女性たちを応援するのは私のライフワークだと改めて感じたしだいです。

何よりたくさんの赤ちゃんに会えて、こりゃ天職だと思いました!


(Aska)

おかげさまで4期目をスタートさせることができました!

  • 2017.06.02

おかげさまで、6月からアルバ・エデュは4期目を開始することができました。まるで子どもの誕生日のようにうれしいことです。


当初、近隣の公民館を借りて、口コミで子どもたちを集めて始めたワークショップも、今ではいろいろな企業や研究者とのコラボが実現し、社団の力を超えて数々のダイナミックなワークショップを開催することができるようになりました。ただ、ワークショップを開催するには、多くの労力が必要で回数も限られ、またどうしても参加者一人当たりの課金額が高くなるために、多くの皆さまに授業をお届けすることが難しい状況でした。

そこでこちらから学校に赴く出前授業に注力を始め、やがて小中高大それぞれにご依頼をいただくようになりました。今では全国からプレゼンテーション教育、キャリア教育、オリパラ教育、それぞれについて連日のようにお問い合わせをいただくような状況になっており、一同うれしい悲鳴です。

 

社団設立前から、子どもたちが「話すちから」を携えて世に出られるよう、プログラムを定型化して授業に組み入れやすくすること、授業の担い手となる講師やファシリテーターを増やすこと、結果としてこの授業を届けられる子どもたち・若者たちの数を増やすこと、を目標に地道に活動してまいりました。今年度は、都の教育庁の採択が下り、都立高校や都立の中高一貫校に授業をお届けすることができるようになりました。またその過程では、多くのみなさまに授業プログラムについてのご意見をいただいたり、実際の授業のサポートをしていただいております。

 

社団設立2年半で多くの方々のご支援をいただき、活動を広げることができました。感謝の気持ちでいっぱいです。過ぎた日々を振り返ると、自分一人の力では到底考えつかなかったであろうことが、みんなの知恵とアイディアと労力によって、無限に構想が広がり、それがバッサバッサと実現する、という不思議な手ごたえが日々ありました。これもスタッフのみんな、立ち上げに関わってくれた仲間たち、授業プログラムやワークショップに協力してくれた仲間たち、ご寄付いただいたみなさま、メンターのみなさま、コラボしていただいた企業や大学のみなさま、専門家のみなさま、授業を受け入れてくださった学校の先生方、自治体の関係者のみなさま、ご参加くださったみなさま、保護者のみなさまなどなどのおかげです。本当にどうもありがとうございました。

 

日々、皆様からのご助言をいただきつつ、これからもますます活動を加速させてまいりたいと思います。「こんな風にしてみたら」とお気づきの点がありましたら、ぜひぜひご指導ください。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

『サピエンス全史』を読んで『気候変化と人間』を読み返して

  • 2017.03.27
年初に『サピエンス全史』上下巻を読みました。
その後、何度か部分的に読み返して、読後感が今頃になりました笑。

「農業革命が人類にとっての不幸だった、という衝撃的な話らしい」、とは聞いていましたが、いやはや、これはここ数年読んだ本の中で、私の一番確定です。
 
数年前にベストセラーになった絵本のような『137億年の物語』という本も、その全体を見通す感じがたまらなかったのですが、この本はまた通史としてホモ・サピエンスの誕生から全体を俯瞰していて、さらに人類を第三者(「者」というのもミスリーディングなくらい)の視点で客観視している点が秀逸です。
 
サピエンスが進出して、どんどん哺乳類が絶滅していく様は、現在のワシントン条約の絶滅危惧種たちもビックリな規模とスピードで起こったことや、近現代は紛争にまみれた時代と思っていたけれど、国家の概念が存在する前がいかに暴力的な世界だったかという話、「認知革命」によって、サピエンスが遺伝子変化のスピードを超えて進化することができたという話、などなど、どれも興味深い話ばかりでした。
 
人類について客観的に見るようになった結果なのか、先日、マザー牧場に行った時にも、牛が鎖に繋がれている様がとても忍びなく思え、その直後にその牛たちが伸び伸びと大地を駆けることを許されている姿を見てホッとしたり。この本をきっかけに、他の生き物や食物に対しても今までにない感じ方をしている自分に気付きます。
 
そして、子どもたち・若者たちのプレゼン力アップを目指すアルバ・エデュの活動からすると、既にあちこちでお話してきたことではありますが、なぜサピエンスがほかの種を征服することができたのかは、言語を操る能力にあった、というのは非常に示唆的な話だと思います。家庭でも地域でも会話が減っている現状は憂慮すべき事態だと思うのです。
 
この本を読んで、ふと思い出して、鈴木秀夫著『気候変化と人間』という本を読み返してみました。天候が人類に与えた影響をつぶさに書いた研究論文という色彩の本です。地球の各地でどの時期にどのような気候変化が起き、民族のダイナミズムにどのような影響を与えたのか、非常に精緻な分析の下に著された本で、ちょうどサピエンス全史の中で語られる、いろいろな大陸にサピエンスが広がっていく1万年に焦点を当てて書かれています。

例えば、民族移動の中でももっとも「有名」だと思われる、ゲルマン民族の大移動についても、この本では、ゲルマン民族は牛を使って一口麦を栽培していたのに対し、スラヴ民族は馬を使ってライムギを栽培したことにより、その移動後の空白地に住むことができた、という話など、非常に面白い話がちりばめられています。
(ただ、残酷な事実や、悲惨な過去の記載も多いので、そういうのが苦手な方はご注意ください。)
 
前掲の2冊の本に負けず劣らず通史として意義深く価値のある本だと思います。これがもっと一般的に平易な文章で、日本語のみならず英語ででも書かれていたら、もっと世界的に読まれたのかもしれないと思うともったいない思いです。
余談ですが、『サピエンス全史』で気になったのは、日本が出てくる数回の中で、朝鮮半島への侵略民族としてのみ語られている点です。筆者さんの住む西海岸での政治力の差なのかしら、と思ったり・・それだけが残念でした。

『バブル』を読んで

  • 2017.01.26

永野健二さん著『バブル』、久々に怖い本を読了しました。読み始めたら止まらなくて、おかげで寝不足です。

バブルの萌芽の時期から、清算されるまでを日経の元証券部記者が絶妙な筆致で描いています。
これまでバブル関連のいくつかの本は読んでみたけれど、どちらかというと理論寄りの本ばかりだったので、今回、実名入り、実額入りの記録に震えました。

私が学生の頃、ケント・カルダー著『戦略的資本主義』を読み、そこに名のあった銀行にあこがれて入ってしまったのですが、今回この本によりその判断が実はコトの一側面しか見ていなかったことを改めて知りました。
もしその時にこれらの事実を知っていたら(当時はまだ明るみに出ることはなかったでしょうが)、その銀行に入ることを選択したかどうか・・とつくづく思う一方、
「え、とくやま、まだ『バブル』読んでないのか、早く買って勉強しろー!」、なんてお昼ごはんをご馳走してくださりながら、いまだにいろいろご指導くださる元上司たちや日々お世話になる先輩や同期たちにも巡り合えなかったのだと思うと、いやいややはり自分の選択は正しかったんだな、なんて思ったり。

人生にたらればがないのと同様、歴史にもたらればはないのですが、この本はバブルに突き進んでいった日本経済の瞬間瞬間を実に巧に切り取って表現しています。

NTT株の公開時についに国民レベルにまでバブルが広がった場面で、「当時は政治家も官僚も民間の経営者もそのことに気づく人はほとんどいなかった。気づいてもその流れに逆らう空気は生まれなかった。」というくだりでは、今の世界的な風潮が重なり、恐ろしく感じます。
そして、「会社の経営をぎりぎりのところで守るのは、運や偶然ではない。いつの時代も、現場への信頼と、組織としての規律、そして経営者の決断である。」という言葉も印象に残りました。

筆者の永野さんは、若者がバブルに対するあこがれを口にするのを聞いて、啓蒙が必要だと感じたと書かれています。この本を読むとそれがとてもよくわかるかと思います。当時、現役だった方にはぜひお話を伺いたいですし、若いみなさんにもぜひ読んでいただきたい一冊です。

みなさま、今年も面白い本があったらどんどん教えて下さい。

(Aska)

 

「ホットケーキを焼くために必要な対話」について考えてみました。

  • 2017.01.17

『はらぺこあおむし』で有名な、エリック・カール氏が書いた『ホットケーキできあがり!』という本を図書館で借りて、子どもたちと読みました。

主人公のジャックが朝起きて、「きょうは でっかい ホットケーキが たべたいなぁ」 というところから物語が始まります。

するとおかあさんは、自分がいそがしいのでジャックに手伝うよう促します。

最初に小麦粉を刈り、粉ひきおじさんのところに行って、「パトンパトン」とから竿でもみがらから小麦の粒を取り出す方法を教わり、石臼で挽いてもらい、次いで、卵、牛乳、バターを調達するために奔走し、そして仕上げに・・・

 

おかあさんは次々に指示を出し、それに従って、ジャックは試行錯誤しながらホットケーキを作り上げます。ここに至るまで、母と子で繰り広げられるコミュニケーションの量は膨大です。外部の人にお願いをし、人の手を借りて、ようやく自分の望みのものが手に入るということを経験します。できあがった時の達成感、そして一口食べた時の口に広がるおいしさは格別であろうことが、本を読む現代のわたくしたちにも伝わります。

 

今日では、小麦粉も卵も牛乳もスーパーマーケットに行けば瞬時に手に入りますし、ホットケーキミックスといったものまで登場し、あっという間にホットケーキが作れる時代になりました。レシピの検索が可能になり、買い物もネットを通じてできるようになり、世の中はさらにさらに便利になりました。

 

ただ、便利になった一方で、ホットケーキがの材料をそろえてから焼きあがるまでに必要な会話は激減し、外部のコミュニティと接触する必要もなくなり、試行錯誤をする時間もなくなりました。ホットケーキ作りに限らず、かつては当たり前のようにあった「対話」や「探求」の時間が、さまざまな場で減っているように感じます。その結果、「話すちから」の基礎となるものが失われているのかもしれないですね。

 

年始に借りたこの一冊の絵本のおかげで、大事なことを再認識することができました。

 

アルバ・エデュでは子どもたち・若者たちの「話すちから」を高める活動をしていますが、そのちからの根幹となるところは学校、家庭、地域における「対話」にあると考えています。これからも授業やセミナー、イベントを通じて、対話を増やす仕組みを提案してまいりたいと改めて思いました。(Aska)

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